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太陽光パネルの発電量比較:固定式と追尾式ではどれだけ差が出るのか?

kikka.7243@neuron-lab.net

太陽光パネルの設置において、日本で最も一般的とされているのは南向き30度での固定設置です。しかし、常に太陽の方向へパネルを向ける追尾式にした場合、発電量はどれだけ改善できるのでしょうか?今回、実際に装置を作って比較実験を行いました。


はじめに:なぜ南向き30度が最適なのか?

固定式パネルの設置角度の根拠

日本で推奨される南向き30度という設置条件は、太陽光が最も強くなる正午において、太陽の方角と年間平均角度に合わせて設定されています。

パネルを30度に傾けることで、太陽高度が60度の時に最も高い発電効率が得られます。実際に筆者の居住地で計算すると:

  • 春分: 53.25度
  • 夏至: 76.76度
  • 秋分: 53.21度
  • 冬至: 29.94度
  • 年間平均: 53.29度

この値は60度に比較的近く、理にかなった設置条件であることがわかります。

補足: 厳密には、設置場所の緯度によって最適な角度は変わります。一般的には「設置角度=設置場所の緯度」とするのが効率的で、赤道付近では水平設置、高緯度地域では垂直に近い角度が理想となります。また、施工のしやすさや積雪・汚れの落下しやすさも考慮されています。

正午に日射量が最大になる理由

正午に太陽光が最も強くなるのは、太陽光が大気を通過する距離が最短になるためです。朝夕は太陽高度が低く、光が大気を斜めに長く通過するため、大気中の水分や微粒子による散乱が増え、地表に届く光量が減少します。


実験装置の構成

システム概要

今回の実験では、以下の2種類のパネルを用意しました:

  • 固定式: 南向き30度に固定したパネル
  • 追尾式: ステッピングモーターによる2軸制御で太陽を追尾するパネル

追尾システムの仕様

追尾式パネルは15分ごとにパネル角度を調整します。これは動作を視覚的に確認しやすくするためで、若干の発電効率低下はありますが、実験の観察性を優先しました。

太陽位置の計算にはPythonのastralライブラリを使用し、時刻と位置情報から正確な太陽高度・方位角を取得しています。

計測システム

使用した太陽光パネルは12V出力ですが、マイコンのアナログ入力端子の上限が5Vのため、抵抗分圧回路(68Ω+33Ω=101Ω)で約1/3に電圧を降下させて測定しました。

測定値から実際の発電電力を算出する式:

  • パネル電圧 = 測定電圧 × (101Ω / 33Ω)
  • 発電電力 = パネル電圧 × 電流

例: 測定値4Vの場合、パネル電圧は12.2V、発電電力は約1.48Wとなります。


測定結果

測定結果と条件

以下測定結果です。
縦軸が電力、横軸が時刻です。
追尾式(青線)のほうが固定式(橙線)よりも電力を得られていることがわかります。

  • 測定時間: 12:00〜18:00
  • 理由: 午前(6:00〜12:00)と午後(12:00〜18:00)は対称的な結果が予想されるため、効率化のため午後のみ測定

測定データの処理

比較しやすくするため、以下のノイズ区間を除外しました

  • 13:00〜14:30: 雲による日射量低下
  • 17:00〜18:00: 周辺環境(山・建物)による日陰

発電量の定量評価

発電総量はグラフの近似線で囲まれた面積で表されます。CADソフトで面積を測定した結果:

追尾式: 60.46 / 固定式: 36.54 = 約165%

追尾式は固定式に比べて約1.65倍の発電量を実現しました。


測定結果の評価と留意点

季節による変動

今回の165%という値は夏季測定の結果です。30度固定パネルにとって夏は比較的理想的な条件であるため、冬季では太陽高度が低くなることで固定式の発電条件が悪化し、追尾式との差はさらに拡大すると予想されます。

負荷条件による影響

本実験では固定抵抗を負荷として使用しましたが、これは最高出力時に最適化されたもので、日射量が低下する時間帯では過負荷となり、出力効率が低下している可能性があります。

実際の太陽光発電システムで使用されるMPPTコントローラ(最大電力点追従制御装置)を導入すれば、固定式でも時間帯による出力低下を抑制できるため、165%という差は縮小する可能性があります。

したがって、今回の測定値は本実験条件における参考値としてご理解ください。


追尾式が普及していない理由

追尾式の発電効率が高いことは実証されましたが、実際の太陽光発電施設では固定式が圧倒的に主流です。その理由を考察します。

1. 土地利用効率の問題

追尾式パネルは、隣接パネルへの影を避けるため、パネル間隔を広く取る必要があります。その結果、同一面積あたりの設置パネル数が減少します。

日本のように土地価格が高く、利用可能面積が限られる地域では、「単位面積あたりの総発電量」が重要となり、結果的に固定式の方が経済的に有利となります。

2. 信頼性と保守性の課題

追尾式システムには以下のリスクがあります:

  • 駆動部品の機械的故障リスク
  • 制御システムの電子的不具合
  • 強風・積雪・塩害などの環境ストレス
  • 定期的なメンテナンスコストの増加

追尾式が採用される条件

土地が広大で安価、かつ日射条件が良好な砂漠地帯や荒地では、追尾式が採用されるケースもあります。しかし、土地制約が大きく気象リスクが高い日本の環境では、追尾式の優位性が相対的に低くなります。


まとめ

本実験により、以下の知見が得られました:

  • 追尾式は固定式の約165%の発電量を実現(夏季・本実験条件下)
  • 季節や負荷条件により、この比率は変動する
  • 日本では土地効率システム信頼性の観点から固定式が主流
  • 広大で日射条件の良い地域では追尾式にメリットがある

太陽光発電システムの選択は、単純な発電効率だけでなく、設置環境、経済性、保守性などを総合的に評価する必要があることが改めて確認されました。

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